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着せかえシネマvol.2:真実[通常版・特別編集版](2019/フランス、日本)

TITTLE 着せかえシネマvol.2:真実[通常版・特別編集版](2019/フランス、日本)

映画とファッションの素敵な関係。
今回は是枝裕和監督のフランス映画がテーマ!
2019.12.28 Culture

TITTLE 着せかえシネマvol.2:真実[通常版・特別編集版](2019/フランス、日本)

映画とファッションの素敵な関係。


今回は是枝裕和監督のフランス映画がテーマ!

 

一時の年間映画鑑賞数は350本以上。(でも今現在は実は100本程度なのは内緒!)
元映画評論家で海外アパレルのプレス経験もある映画&ファッションマニアが偏愛たっぷりにおくる、気まぐれ連載。
気まぐれすぎて2回目にして最終回かもしれない今回も好き勝手に語ります。

2019.11月のシネマ(鑑賞順)

75.グッドナイト・ムーン(1998/アメリカ)
76.ボーダー 二つの世界(2018/スウェーデン、デンマーク)
77.アリーキャット(2016/日本)
78.ジョーカー(2019/アメリカ)
79.デンジャラス・ディール 詐欺師の逆襲(2015/アメリカ)
80.真実[通常版](2019/フランス、日本)
81.美しい星(2017/日本)
82.ハングオーバー!!史上最悪の二日酔い、国境を越える(2011/アメリカ)
83.LION ライオン 25年目のただいま(2015/アメリカ)
84.真実[特別編集版](2019/日本、フランス)
85.嘘八百(2017/日本)
86.アンダー・ザ・シルバーレイク(2018/アメリカ)

11月は12本鑑賞。(タイトル左の数字は今年の鑑賞数)
新作も旧作も入り交じっておりますが、映画館で観た中では通常版と特別編集版と2バージョンで堪能した作品があります。
今回はずばりその『真実』の「着せかえ」!

冬に映えるオールホワイト

オールホワイト

『真実』は、もはや「世界のKORE-EDA」となった是枝裕和監督がカトリーヌ・ドヌーヴ、ジュリエット・ビノシュ、リュディヴィーヌ・サニエといった豪華すぎるキャスト陣を招いて製作された作品。
『誰も知らない』に感銘を受けたジュリエット・ビノシュから監督へラブコールがあったのだそう。

フランスを代表する大女優ばかりが並んでおりますが、ビノシュ演じるリュミールの夫役としてアメリカからイーサン・ホークも出演しております。
特に特別編集版では彼のやさしいまなざしがフィーチャーされており、監督も「彼のファンには特別編集版を観てほしい」と公言しているほど。

是枝監督といえばドキュメンタリー出身ならではのリアリティーあふれる間合いと家族を丁寧に見つめた作品づくりが特徴的ですが、こちらも「家族」をテーマにした作品。
主軸となるのはカトリーヌ・ドヌーヴとジュリエット・ビノシュが演じる母娘です。

育児よりも女優業を優先させてきた大女優ファビエンヌ(ドヌーヴ)とその娘リュミールのすれ違いやわだかまりが少しずつほどかれていく様を描いているのですが、決してドラマティックな展開ではないのに、鑑賞後には長編小説を読了した後のような充実感があります。

青空

ですが、今回取り上げるファッションはその2人ではなく(ファビエンヌの気品あふれるヒョウ柄コートの着こなし方も気になったのですが、なかなか真似できそうにありません)、マノン(マノン・クラヴェル)という若手女優。

事故により亡くなってしまった女優でありファビエンヌの妹である「サラ」の再来ともいわれている彼女は、あえて自伝本でサラについて一切触れなかったファビエンヌにとっても、母代わりとしてサラのことを強く慕っていたリュミールにとっても、大きな影響を与えます。

中でも印象的なのは、ファビエンヌがマノンの娘役を演じる劇中劇のSF映画でのシーン。
マノンはある病気で地球に住めず、家族を残してひとり宇宙に暮らしている役を演じており、それゆえに年を取らないという設定なのですが、全身真っ白な衣装を身につけた彼女にはどこか神秘性が感じられ、圧倒的な存在感を放っています。

ファビエンヌにとってマノンは、サラという妹であり、娘の母代わり(自分の代わり)でもあった存在の「再来」。
つまりこのSF映画がただのベテラン女優と若手女優の共演作以上の意味をもつことは明らか。
2人の女優の関係性の変化もまた、この『真実』という作品の軸を支えるわけです。

物語の後半には、かつてサラが着ていた白襟のブラックワンピースがマノンに贈られ、物語がエンディングへ向かう上で象徴的なアイコンになっていたのですが、あえてその過程を彩る劇中劇のオールホワイトの衣装をチョイス。
実際の衣装とはシルエットも素材も異なりますが、あくまでもイメージです。

白ニット

マノン役にマノン・クラヴェルを選んだ理由について(名前が一緒なのでややこしいですね)、是枝監督は「声」だと明らかにしています。
笑顔を絶やさない彼女の表情や仕草からは気さくでキュートな印象を受けますが、意外とその声は重低音。
でも圧を感じるような重苦しいものではなく、むしろ心地のよい、そして一度聞いたら二度と忘れないような声。

実生活では母であるファビエンヌの母役を劇中劇で演じるマノンには、『真実』という作品における絶対的な「母体」となりうる母性と存在感が必要でした。
そしてそのパワーを過多に演出せず、あくまでもクリーンに包み込む「白」が、まるで、より安心感となにものにも見透かされない確固たる強さを表しているように感じるのです。

オールホワイト

爽やかな小説の読後感のようなスッキリした印象を鑑賞後にもたせたいということで、監督は家族で空を見上げるシーンをラストにすると最初から決めていたそうですが、本当に、なんてことはない(母が女優という環境はなかなかないですが)この「家族」全員を愛しくなるような映画です。

機会があれば、ぜひ。

ちなみに「特別編集版」は、イーサン・ホークをはじめとする男性陣にフォーカスを当てており、ファビエンヌとリュミール母娘が周りの人間からどれだけ愛されてどれだけ見守られているのかが伝わります。
私は「魔法」のくだりがとても好きでした。

あとその魔法を教えてもらったシャルロット(ファビエンヌの孫)が母であるリュミールに最後に問う質問もいいんですよね…。(こちらは通常版でも観られるシーンです)
実際に観てみてご確認を!

枯れ葉


 

『真実』あらすじ

フランスを代表する大女優ファビエンヌが自伝本を出版する。
娘であるリュミール、その夫のハンク、娘のシャルロットがお祝いに駆けつけるが、リュミールは女優業で忙しい母の代わりに一緒にたくさんの時間を過ごした、今は亡き叔母のサラに関する記載がないことに激怒。
さらには嘘の過去が書かれていることも指摘する。
しかしファビエンヌは「女優が真実を書いてどうするの」と悪びれない様子。

隠された真実と記された嘘。
ある日ファビエンヌの理解者であった秘書が急に辞めてしまい、リュミールはわだかまりをもったままその代わりとして一時的に毎日ともに過ごすことに。

新作のSF映画の撮影に付き添う先のスタジオで会ったのはサラの再来といわれている若手女優。
才能あふれる彼女の演技、そしてリュミールの家庭やファビエンヌの元夫、今のパートナー、さまざまな「家族」たちと触れ合いながら徐々にわかっていく真実の裏の嘘、嘘の裏の真実。

>映画『真実』公式サイト


 

撮影:tom

浦田みなみ

ballooo編集長。
派手な服ばかりを着ているわけではない。
なによりもねこを愛していきたい。
2018年、「#休日クリームソーダ日和」結成。(活動中)
2019年、満を持して天城越えを達成。